第二回林英哲杯太鼓楽曲創作コンクール 総評

林英哲氏より、一次審査作品について次のような総評をいただきました。
応募された方も、次回の応募を予定されている方も、今後の曲づくりのためにぜひ参考になさってください。
第二回・林英哲杯・太鼓楽曲創作コンクール 総評
林 英哲 


 史上初の太鼓楽曲創作コンクールが今年二回目を迎え、先般、予選審査が無事終了しました。
 昨年は「様子を見るためとりあえずトライ」というような作品も多く、レベルも玉石混交の感がありましたが、今年は、全体的に意欲的な作品が集まりました。

 このコンクールが何を「創作」として評価するか、という意図が皆さんに伝わってきたのでしょう。
 そのぶんハードルが高いと思われたのか、参加数は若干減りましたが、上質な意欲的作品がそろった、という意味では良い傾向だと思います。
 このコンクールが本来目指すもの――日本の太鼓文化の質の向上、奏者への正当な評価、指導者・創作者への正当な評価、そしてその応援――に沿って来た、という気がしています。

 このコンクールは「優劣を秤(はかり)にかけて、競わせる」ことが目的ではありません。
 コンクールですから、結果的に誰かを選出することにはなりますが、それよりも大事なのは――せっかく好きでやっている太鼓をより良く演奏するためには、どういう表現をすればいいか、どういう練習をすればいいか、どういうことを学び、何を目指せばいいか――そのことを、互いの演奏を実際に見、学んで成長し合える場になればいい、と私は思っているのです。
 去年の、白山市での実演による本選の後、私が全参加者それぞれに「講評」をして、それが延びて会場の時間オーバーになりあわてましたが、私としてはどうしても具体的に、一人ひとりに説明したかったのです。
 一人の審査によるコンクール、という形にしたのも「全員に講評」をしたかったからです。印象批評だけだったり、具体的な講評がなかったりすれば、参加者は「何を審査され、どうすればもっと良くなるのか」がわからないまま、選にもれた人は残念な気持ちで帰るだけになるからです。
 それでは、このコンクールに参加した意味がありません。ですから今年も同じ審査基準で、本選では時間の許す限り全員への講評もやって、参加者にとって実りあるコンクールにしたいと思っています。
 本選の前日(7月16日)に開催される「エクスタジア2017」では、昨年の第一回最優秀賞に輝いた人達が演奏しますので、それも、ぜひ見逃さないようにしてください。


◆さて審査は昨年同様、次の6項目を基準に、それぞれ1~5までの5段階評価としました。
  <曲>
   作曲、構成など作品としての質が優れているかどうか。
  <リズム>
   リズム音楽としての魅力があるか、リズム演奏力があるかどうか。
  <打力>
   日本の太鼓らしさ、打ち込みの力強さがあるかどうか。 
  <独創性(オリジナリティ)>
   作品、演奏に、独自の表現を盛り込んでいるか。
  <型>
   重心や足腰の安定感があるか、構え、型の美しさ、力強さがあるか。
  <動き(団体部門ではアンサンブル)>
   打つ動きに無駄がないか、動きに魅力があるか。団体の場合は、アンサンブルとして調和がとれているか、乱れがないか。
 以上の視点から点を付けました。体操競技やシンクロ競技のように厳密な技の点数制にすることは不可能ですが、
 できるだけ客観的になるようにこの基準にしています。


◆次に私自身の経験から、全体を見て気が付いたことを挙げておきます。

 ●応募映像を撮る時、太鼓の空気振動でカメラがブルブルとブレを起こすことがあります。
  振動を受けないような位置、角度、固定方法、などに配慮して下さい。小型カメラで狭い部屋の場合、特にブレやすくなるようです
  (ガラスなどを一枚隔てると、空気振動が軽減すると思われます)。

 ●団体競技的な打ち方の「癖のようなもの」――「不安定なままやたら動く」、「重心、構えが定まらない」、「むやみな大振り」
  「力まかせのぶっ叩き」――こういう応募は、今回は少なくなりました。
  第一回にも書きましたが、こういう打ち方は、元気良く見えて派手なので観客には受けるのですが、そのうち関節、腰、背中など、
  体を傷める原因にもなり、打ち手の技量もこれ以上伸びません。「派手さ」がダメなわけではないですが、表現としては「花火」的な
  一過性の表現になり、奏者自身の体へのダメージも大きく、将来的に打ち続けられなくなるおそれがあります。気を付けてください。

 ●舞踊的訓練が不足なまま、振りを取り入れる団体も少なくなり、今年の参加者は動きの質も向上しています。ただ、重心が高い、
  下半身の重心が定まらない、足腰の構えの基本がわかっていない、というチームはいくつか見受けられました。
  これは、太鼓経験者による適切な指導を受けていないためと思われます。特に高校生など若いチームでは、指導者の技量、経験値が
  そのまま反映されます。高校野球などと事情は同じです。監督の技術指導、采配次第で、若い選手はどのようにでも変わります。
  指導的立場の方は、くれぐれも気を付けて下さい。

 ●また、太鼓の伝統が地元にはない地域の、新参の太鼓チームでは、どうしても他の太鼓団体を、見よう見まねで演奏することに
  なりがちです。
  その場合、形を似せてはいても、基本的な構えや、腕の振り方がわかっていないことが多く「残念なコピー」になりがちです。
  直接、指導を受けない、あるいは一時的な指導だけ受けてあとは我流、という実情だろうと思います。
  団体の場合は特に「全体を客観的に見て、判断できて、指導できる人」がいないとアンサンブルの質は向上しません。

 ●太鼓セットを使う場合、太鼓の数を必要以上にたくさん並べる傾向があったのですが、今回の参加ではなくなりました。
  少ない太鼓でどれだけ多彩な音楽や技を表現できるか、という基本をこれからも大事にして下さい。

 ●残念なことですが、日本の伝統音楽や祭り囃子、郷土芸能への関心が薄い、聞いたことも見たことも学んだこともない、と思われる
  人達やチームが多いように思いました。昨年も同様でしたが。
  例えば、曲の構成が、いきなり4分の4拍子で始まり、最後までそのまま、というような曲が目立ちます。日本の楽器(太鼓)なのに、
  日本文化とは何の関係もない表現で、さりとて現代的な音楽表現とも言えない曲構成です。
  日本のリズムや囃子は独特で多様性があり、とても面白いのに、日本で育った「太鼓好きな日本人」にも関わらず、日本固有の音楽に
  興味もなく、学習もしない、というのは何とも残念です。(逆に海外在住の人、海外から学びに来た人の方が、日本の伝統文化の学習
  に熱心で、詳しいのは皮肉なことです)。
  日本の太鼓打ちなら、日本の祭囃子や伝統リズムを学んで、そこから独自の新しい曲を創る発想が欲しいです。地域の伝統を勝手に
  変えることは禁じ手、ですが、そこから学ぶことは多くあります。

 ●「かつぎ桶」と呼ばれる青森県の太鼓打法に、韓国の「チャンゴ」打法を混ぜるのは、このコンクールでは基本的に良しとしません。
  これを「日本の太鼓」としてやるのは無理があります。(創作表現の一部として、例外的に認めることはあります――第一回の最優秀賞
  受賞者の木村寛大くんの「かつぎ桶太鼓」の表現は抜きんでて独創的)
  派手さも手伝って、今やこの奏法はプロ集団の影響から全国に広がってしまい、取り返しのつかないことになっていますが、日韓双方の
  「固有の伝統文化の混乱」を招いていますし、その文化を大事に継承している青森、韓国、双方の人達に対して失礼です。恥ずかしくも
  あります。
  私は韓国の伝統音楽の名手とも長い交流があり、青森県の太鼓も学んで大好きなので、よけい残念に思います。真似るのではなく、
  それぞれ固有の伝統の技として尊敬しあうのが筋と思います。

 ●日本の太鼓の技を使って、どう表現を開拓して行くか、新しさを出すか、質を高めるか、世界に出せるか、ということがこのコンペの
  方向性なので、それを踏まえて、今後の作品創りに挑んでください。

第二回林英哲杯太鼓楽曲創作コンクール 本選

一次審査を通過した精鋭たちの演奏を間近で観覧しませんか!

2017年7月17日(祝・月)
 白山市鶴来総合文化会館クレイン(白山市七原町77/電話076-273-8700)
 開演13時30分  <開場13時00分>
 終演予定19時

出演
 第二回林英哲杯太鼓楽曲創作コンクール一次審査を通過した16の個人・団体 

ゲスト
 池辺 晋一郎(作曲家)
   
観覧チケット
 全席自由 前売/一般1,000円  高校生以下500円
      当日/一般1,500円  高校生以下500円

現代日本の太鼓音楽表現を切り拓いてきた第一人者である林英哲が、良質な太鼓音楽を世界へ発信するため、日本の太鼓界初の試みとして、「作曲と上演形態を含めた表現全体をひとつの創作作品ととらえる」という、かつてない視点で意欲的な創作作品の創造を広く呼びかけ、新たな時代を担う人材の発掘と育成を目ざします。

チケット取り扱い
 太鼓の里体験学習館 076-277-1721
 石川県立音楽堂チケットボックス 076-232-8632

お問い合せ
 林英哲杯太鼓楽曲創作コンクール事務局
 白山市福留町586(一般財団法人浅野太鼓文化研究所内)
 電話.076-278-5170/FAX.076-278-8183

演奏順
■独奏部門 青少年の部
 1.薫風         土田 純平(岐阜県)
 2.雷震         土田 倖平(岐阜県)
 3.打雅輝        二木 輝尚(石川県)

■独奏部門 一般の部
 4.藤鼓         田中 嘉久(三重県)
 5.朔          小松 紀子(東京都)
 6.巌流         溝端 健太(兵庫県)
 7.歩ケドモ歩ケドモ。  石原 滉基(石川県) 

■団体部門
 8.真夏の左義長     福井県立勝山高等学校 日本文化部(福井県)
 9.空          だげきだん(東京都)
 10.双竜         和太鼓 欅(岐阜県)
 11.UTO         太鼓芸能集団 紬衣(熊本県)
 12.火の花        松明太鼓小若組シニアチーム(福島県)
 13.星月夜        北海道和太鼓塾(北海道)
 14.響          上石津もんでこ太鼓 弾(岐阜県)
 15.上昇         尽誠学園高校尽誠太鼓部(香川県)
 16.湖嵐         MIHO美学院中等教育学校(滋賀県)
株式会社浅野太鼓楽器店(新響館)
石川県白山市福留町587番地1 Tel.076-277-1717 Fax.076-277-2228店舗詳細
一般財団法人浅野太鼓文化研究所
石川県白山市福留町586番地 Tel.076-277-1721 Fax.076-277-8777
浅野太鼓祭司株式会社
石川県白山市福留町598番地1 Tel.076-277-1277
太鼓の里 響和館
東京都目黒区五本木2丁目15番地9 秀永ビル地下1階 Tel: 03-3714-2774施設詳細
ASANO TAIKO U.S.
20909 S.WESTERN AVE., TORRANCE, CA 90501 Tel.+1-310-974-4490店舗詳細
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