第三回 林英哲杯 太鼓楽曲創作コンクール 本選結果

第三回林英哲杯太鼓楽曲創作コンクールは2018年7月21日(土)
白山市松任学習センターで開催されました。
独奏作品部門と団体作品部門の計10組11曲の熱演の結果、次の皆さんが林英哲杯を受賞されました。
■独奏作品部門 青少年の部
 最優秀賞
 土田 純平(岐阜県) 作曲−土田 純平  作品−蛍火
 優秀賞
 該当なし

■独奏作品部門 一般の部
 最優秀賞
 榎本 和文(埼玉県) 作曲−榎本 和文  作品−太鼓ブギ喜八
 優秀賞
 溝端 健太(兵庫県) 作曲−溝端 健太  作品−八百万

■団体作品部門  最優秀賞
 だげきだん(東京都) 作曲−八木 敦子  作品−風
 優秀賞
 輪島・和太鼓 虎之介(石川県) 作曲−今井 哲也  作品−稲妻
 優秀賞
 大太坊(長野県) 作曲−北原 永  作品−天龍

■特別賞
 作曲賞
 八木 敦子(東京都/だげきだん) 作曲−八木 敦子  作品−風

総評――林英哲

●今年の第三回コンクールへの応募総数は、昨年よりも若干減っていますが、本選に残る作品、奏者のレベルはさすがに今年も高い結果となりました。

このコンクールの趣旨は、今まで英哲杯のホームページにも書いていますし、本選での審査、講評でも私が言っておりますが、参加者がお互いに表現を学び、成長する場だということです。
私はそこで、何が足りないのか、どうすれば伸びるのか、表現とは何か、ということを、できるだけ具体的に、全員に解説したい、ということで審査をしています。いわば「太鼓学校」です。
せっかく太鼓が好きなのに、そういう人たちが学ぶ場がない、というのが、この分野——日本の太鼓のいちばんの問題点だと、私は思っているからです。

「創作」が難しいのは、プロ、アマ問わず、誰にとっても同じです。
「創作」は腰が引ける、という気持ちもあるかもしれませんが、知らなかった表現や方法に向かって目を開くつもりで、応募してほしいと思います。
そして選に漏れたとしても、本選での優秀者の演奏を実際に聞き、私の講評をぜひ、聞いてほしいと思います。必ず、得るものがあると思います。

一次ビデオ審査では、参加者それぞれに、具体的に講評を書いて返送しています。本当は、全員がその講評を見れば、とても勉強になるはずですが、そういうわけにもいかないので、大まかな感想だけを、ここでは述べます。

●幼児や小学生の応募もいくつかありましたが、太鼓は体ができていない子供には無理な場合があるので、中学生以上の年齢になってから応募してもらった方がいいかと思います。

●韓国の太鼓(チャンゴ)打法、韓国のリズムを全面的に取り入れた応募作品がいくつかありました。
私はこれまでも書いていますが、このコンクールは「日本の太鼓の創作表現」を審査するものです。
日本にある豊かな伝統表現を生かした,日本ならではの創作を望んでいます。
韓国のリズムや太鼓表現は、韓国の長い伝統や文化の裏付けによって成り立っており、勉強するのはいいのですが、日本の太鼓がそれを安直に形だけ真似るのは、とても恥ずかしいことですし、残念に思います。
韓国で伝統文化を守っている人たちにも失礼になります。
私は、韓国の優れた伝統継承者との共演も長くやっているので、よけいに、そのことを痛感し、残念に思っています。
おそらく日本のプロ太鼓集団出身者が、そのような演奏をするのを見て真似たのだと思いますが、そういうプロ奏者がいることも残念です。
現代の「和太鼓」は、「和」と言いながらも、日本の伝統とは直接関係性を持たない在野の文化として広まってしまったので、認識不足や混乱が生じているのが、とても残念です。
特に「プロ」と称する団体や打ち手の意識レベルが、残念でなりません。

●毎回のことですが、そういったプロ太鼓集団の影響を、丸ごと受けている人たちも、目につきました。
「和太鼓のプロ」という人たちは、それを仕事にしている、というだけで、日本の太鼓の正しいお手本、というわけではありません。
アマチュアから見ると、真似たくなるのかもしれませんが、そこは気をつけてほしいところです。
このコンクールは「創作」の工夫を見たいので、プロの太鼓を上手に真似ているだけ、では評価できません。

●高校コンクールのような、元気いっぱい、力任せのぶっ叩き、というような表現も,今回もいくつか見られました。こういう打法は、この後の成長につながらないので、指導者の方はぜひ、気をつけて頂きたいところです。

●衣装や演出に凝るのはかまいませんが、審査の時はそれを考慮に入れません。衣装や演出を、和風を意識するからでしょうが「外国人の作る寿司」のような、よくわからずに作っている、実際にはありえない「和風もどき料理」のような仕上がりになっている曲もありました。気になるところです。

●地味でも、しっかりした打法、姿勢、構成などが伴えば、太鼓の曲は人の心に伝わります。一時的な派手さや、にぎやかさだけではない作品の応募を期待しています。