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2017年3月24日

春、東西・人物往来

 春は移動、そして異動のシーズン。列車も飛行機も宿も大混雑の今日このごろですが、自ら遠方に足を運んだり、はたまた我が社にお迎えしたりと、今月もたくさんの出会いがありました。

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まず11日は兵庫県福山市へ。古くから箏の生産が盛んな土地柄として知られ、一度は訪ねてみたいと思っていた所。ちょうど翌日は広島で「太鼓本舗かぶら屋」の公演があり、これ幸いと途中下車。町並みをたどったあと、坂本竜馬の「いろは丸事件」「崖の上のポニョ」や万葉集にも詠われた鞆の浦でひと息。のどかな風景にしばし癒やされた一日でした。

 ふたたび新幹線で向かったかぶら屋の公演は、設立20周年の記念公演。2時間半に及ぶ舞台は活気に満ちて、満員の客席からはたくさんの声援が送られていました。どうかこれからもガンバってください

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石川に戻った13日、フロリダに太鼓を普及してきた石倉武政さんがご来社。夕食を共にしながら昔話に花を咲かせ、また現地の太鼓事情に耳を傾けたりと、

心なごむ一夜でした。

 翌14日は三重県の長谷川恵子さんの道場へ練習風景の見学、お孫さんが大の太鼓好きで、そのご縁でなにかとお世話になっている人で、いつもの明るい笑顔に元気をいただきました。 

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 その週末の17日は、4月の新年度から我が社の一員となる新入社員をお迎え。鹿児島の太鼓チームに所属していた青年で、社会人としての第一歩を我が社に刻むことになりました。いろいろ試練もあることでしょうが、立派な職人に育ってくれることを願うばかりです。

 翌18日、まもなく86歳になる寿司職人の「弥助」さんにお目にかかる機会あり。弥助さんといえば全国的に知られた寿司の名人。元は空港のある小松に店を構えていたことから「小松弥助」とよばれ、この春から金沢駅近くに新たに暖簾を掲げることになったそう。年齢を重ねてもまだまだ健在で職人を貫く情熱と気迫に、私も心が燃えるようなエネルギーを感じさせられた次第。

 そして3連休最後の20日、藤本さんとアルゼンチンから日本に留学していたサン・クリストバル・ガストンさんの東京で送別の食事会。彼は現地で「真髄太鼓」というチームを率い、3年前からつくば大学で地下鉄工学を学びながら、和太鼓をはじめ能や歌舞伎、舞踏など日本の芸能をたくさん見聞し、そのエッセンスを持ち帰って今後の活動に活かしていくとのこと。

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2013年ASANO US   2014年石川      2016年伊勢

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 将来はアルゼンチンに太鼓文化センターを設立するのが夢だそうで、なんとも心躍る未来図。国境を越えて人の心をつかむ太鼓の不思議な力をあらためて感じたガストンとの別れでした。

 2017年3月東京

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2017年3月10日

過去から現在、未来へと、人は生きる

  桃の節句も過ぎて、寒さの中にも春を意識させる穏やかな日曜日、四国で「讃岐まんのう太鼓」の30周年記念公演が行われました。讃岐まんのう太鼓といえば、思い出深いのが、30年前の太鼓納品の道行き。まず大太鼓注文にあたり、胴はどうしてもカリンで製作して欲しいとのリクエストがあり、確かにカリンは堅くて木質が緻密なために音響的にはすぐれているのですが、大太鼓をつくるほどの大径木が果たしてみつかるかどうか。さんざん手をつくし、選び抜いた材料でやっと完成した大太鼓を、今度は松任から満濃町まで大移動。当時、まだ北陸自動車道もない時代、一般道路を通って滋賀県木之元インターに向かい、ようやく乗った名神高速で大阪南港へ。そこからトラックごとジャンポフェリーで高松港、そしてふたたび一般道で満濃町へと、往復丸4日間の行程。そんな苦労の甲斐あり、その後まんのう太鼓はカリンの大太鼓をシンボルにし、香川県の太鼓をリードする存在となったことは衆知の通り。「おお、あれから30年か・・」と、最近しきりに過去のできごとが懐かしく思えるのは、古希を迎えた年齢のせいか。いやいや、いろんな過去があってこそ現在があると、多くの皆さんとの思い出を大事にしながら前に進んでいきたいと思っている今日このごろ。 

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 その同じ3月5日、福島県では楢葉町で震災復興を願う太鼓コンサート「ふるさとに生きる」の開催。2011年3月11日の東日本大震災に関連する福島第一原発の事故により全町避難から6年、昨年ようやく避難指示が解除されたものの、いまだ復興にはほど遠い現状。この日は「ならは天神太鼓うしお会」の奔走により、同じく事故の影響を受けた双葉町の「標葉せんだん太鼓保存会」、広野町の「広野昇竜太鼓」、高岡町の「小浜風童太鼓」が参加、さらに踊りの2団体とゲストにBURAIHA(和太鼓)の皆さんも加わり、全部で7団体が出演。家族や知人との離合集散などを乗り越え、太鼓を心のよりどころとして生きてこられたこの6年間の歳月の長さを思うと、ふるさとの地で全身で太鼓に向かう姿にただただ胸を打たれた3時間。少しでもお役に立てることはないかと、あらためて思いを新たにしたひと時でした。

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2017年2月24日

春近し、我が社の風景

 我が社にはこのところ、ケヤキやタモなど胴の原木が次々に入荷しています。幸い今年はどの木も質が良く、原木市場に足を運ぶのが楽しみです。これらの木から太鼓をつくり、ふたたび命をよみがえらせるには2年から3年、あるいは4年の歳月がかかりますが、そのころには東京オリンピックも開催され、願わくば晴れがましい場で鳴り響いてくれたらと胸をふくらませています。

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 一方、工場では、岐阜県の高山祭りに使う太鼓の張り替えと彩色が順調に進んでいます。華やかな鳳凰の絵柄に取り組んでいるのは20代の若い職人で、若者の技の蓄積の旺盛なことには驚くばかり。ちょうど今年は酉年、「酉」の字にはもともと「果実が熟してきた状態」という意味があるそうで、職人の成長がますます楽しみな今日このごろです。

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2017年2月 7日

映画「ざ・鬼太鼓座」に思う

 先月28日、4年前にケヤキの3尺大太鼓をお納めした栃木県小山市の須賀神社に遅ればせの初参り。冬とは思えない小春日和のあたたかな日差しを受けて、何はともあれ1月のうちに参拝が叶ったことにほっとしたひと時でした。

 その足で、翌日は東京渋谷のユーロスペースへ。1月21日から2月3日まで上映会がおこなわれている映画「ざ・鬼太鼓座」のデジタルリマスター版(最新のデジタル技術によって、鮮明で臨場感あふれる映像によみがえらせた映像)を見るためで、この日は第1回の上映のあとに、映画に登場する林英哲さんと映画評論家の山根貞男さんの対談があったからです。

 この映画はタイトルの通り、当時佐渡で活動していた鬼太鼓座(当時の名称は「佐渡の國鬼太鼓座」)の日常や演奏風景をクローズアップしたもので、制作されたのは鬼太鼓座が解散した直前の1981年。その後、さまざまな事情により今までほとんど上映されなかったのですが、監督としてメガホンをとった加藤泰さんが今年生誕百年ということで、昨年、イタリアの第73回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門でワールドプレミア上映が行われたのに続き、今回の上映会が開催されたものでした。

 映画の登場人物は36年前の林さんのほか、若い日の藤本吉利さんや近藤克次さん、高野巧さん、小島千恵子さん、藤本容子さん、さんなど、今も太鼓界で活躍されている皆さん。その屈託のない青年時代の姿に懐かしさをおぼえると共に、まだ「太鼓」という芸能分野のなかった時代、「太鼓で世界を回る」と鬼太鼓座を立ち上げた田耕というプロデューサーの並々ならないエネルギーと、その無謀ともいえる構想をまとめあげた島崎信さん(現在の鼓童財団理事長)、永六輔さん(放送作家、昨年死去)、宮本常一さん(民俗学者、1981年死去)による惜しみない協力、そして何よりも太鼓の訓練として「走る=太鼓」を実践した田さんの発想の独創性をあらためて実感させられました。

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ボストンマラソンゴールにて 

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1975年オーケストラと太鼓

  この映画の撮影が終わってまもなく鬼太鼓座は解散し、団員は新たに「鼓童」を立ち上げ、太鼓という芸能は「舞台芸能」として大きく成長してきました。そうした経緯を思うとスクリーンの一つ一つのシーンに特別の感慨があり、また私個人としても初めて佐渡に渡って6尺の桶胴太鼓を納めた日や3尺8寸の大太鼓を納めた日、海外公演に同行して革の締め直しをした日々など思い出し、「鬼太鼓座」という、太鼓芸能の創生期に生まれた集団にかかわったすべての人々の熱くがむしゃらな血の騒ぎが生々しく胸によみがえってきました。思えば1971年の鬼太鼓座結成の年からすでに50年近く。その歳月の積み重ねを今さらのように噛みしめた映画でした。

  0207.2017.a1.gifトラック上 高野巧さん 

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2017年1月26日

卒寿と不惑の太鼓熱に感動

 去る14日、高知市で明神宏和先生が主宰する「土佐和太鼓研究所一響館」の第11回和太鼓コンクールが開かれました。今年も高知県内の各地から集まった20あまりの太鼓チームが日頃の練習の成果を競い、たっぷりと目と耳を楽しませてくれました。それにしても明神先生のかくしゃくとしたお姿にはいつも感動。90歳になられた今も太鼓に対する情熱を熱く語り、ことに「10年間コンクールを続けてきた中、みんなが自分磨きをしてきたからこそここまで成長できた」とのお言葉に胸を打たれ、私も70歳になるのを機にあらためてこれからの10年は悔いのない自分磨きに努めようと心に誓。

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 その翌週の22日は、愛知県刈谷市で羽田康次さんとひかるさんご夫妻による「和太鼓ユニット光」の誕生記念コンサート。康次さんの誕生日に毎年継続しているコンサートで、不惑を迎えた今年のサブタイトルは「一途」。約3時間におよぶ舞台は見事な演出と構成に加え、二人の呼吸の合ったアンサンブルと、ゲストとして参加した小林辰哉さん、若山和之さん、金刺敬大さん、加藤木朗さんの4人のほどよい緊張感が厚みのある空気感をかもし、素晴らしいステージとなりました。40歳にしてこの舞台をつくられた皆さんに、深く感心したひと時でした。

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 前日、私事で恐縮ですが、私も古希の誕生日を迎えました。多くの皆さんからお花やお言葉等をいただき、心より御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。これを励みに引き続き頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします 。

 

 

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2017年1月 7日

謹賀新年。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

新年おめでとうございます。
本年もご愛顧のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。

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  石川県の今年の正月は例年にないほどあたたかく、穏やかな新年を迎えました。風邪気味ながら、久し振りにのんびり過ごした三ケ日。そして五日は我が社恒例の初詣。全社員そろって「加賀一宮」と仰がれる白山比咩神社に参拝し、今年一年の幸いを祈願しました。

 初詣といえば商いにかかわる人なら誰でも願うのがまずは商売繁盛ですが、今年さらに大きな関心事となっているのが、まもなく本格始動するアメリカの新大統領の動向ではないでしょうか。トランプ氏という予測のつかない人物の意向次第で、日米関係はどうなっていくのか。強固な日米同盟は継続していけるのか。非常に難しい時代に突入していくような予感を覚えながら、それでも我々は一歩ずつ丁寧に仕事をしていくのみです。

 また私事としては、今年はいよいよ古希という節目の年。しかしながら、これまでに引き続いてできる限り全国の皆さまのコンサートやイベントなどにお邪魔したいと思っていますので、健康管理に留意し、体力の維持に努めていくよう頑張ります。どこかで見かけたら、ぜひお声をかけてくださるよう、楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。

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2016年12月27日

釧路に太鼓を根づかせた先駆者、逝く

 「やれやれ、今年も残すところあと10日足らず」と、暮れの片付けを始めた22日、北海道から思わぬ訃報。昭和42年に釧路市で「北海道くしろ蝦夷太鼓保存会」を創設時メンバー塚原茂夫さんが亡くなられたとのこと。折も折、北海道では12月にしては未曾有の大雪とのニュースを横目に見ながらも、言葉に尽くせないほどお世話になった塚原さんに香華をたむけずにはおられぬと23日朝、釧路行きの飛行機に。道々、思うのは塚原さんの大きな功績で、市役所職員を務めるかたわら警察音楽隊の指導に並々ならない情熱を燃やされたこと、多くの高校で太鼓指導をされたこと、いち早く太鼓曲の楽譜化に取り組んで太鼓音楽の普及に尽力されたこと、さらにオペラ曲の作曲で知られる水野修好先生の曲を蝦夷太鼓のレパートリーにできたのも、音楽に深い造詣があった塚原さんがおられたからこそなど、数え挙げればキリがないほど。幸い通夜の席に間に合い、塚原さんをしのぶ釧路の皆さんとも再会でき、昔語りに花が咲いた一夜。北海道の太鼓文化に確かな足跡を残された塚原さん、享年83歳。どうかやすらかにお眠りください。心よりご冥福をお祈りいたします。

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2016年12月15日

 

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 去る9日は毎年恒例の「山祭り」。山や木にかかわる職人たちが山の神に感謝を捧げ、心願成就を祈願する日です。我が社もこの一年、大きな事故もなく過ごすこができ、新たな良い人材にも恵まれたことに感謝して、白山比咩神社の神様に深く手を合わせてきました。これからの一年も、どうぞよろしくお願いいたします。 

 さて、翌10日は大阪で「打打打団天鼓」の公演。今回は元SKDの皆さんとの太鼓×歌劇のコラボレーション。タイトルは「大阪城パラディオン(守護神)-将星☆真田幸村-」というドラマチックなもので、果たしてこれまでは音を「聴かせる」太鼓が、さらに「演じる」「見せる」という新たな表現に挑戦。華やかな舞台に、太鼓の今後のいっそうの進出を期したひと時でした。

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 その足で向かったのは羽田空港国際線ターミナルでの「笛フェスタ2016」。文字通り篠笛を中心としてライブイベントで、中でも狩野泰一さんの演奏はあらためて「すごみ」さえ感じさせるほどの聴き応え。まずその姿勢の美しさに見惚れ、まっすぐに立った身体の体内の気管と篠笛の管が一直線に結ばれて共鳴するような、芯の通った笛の音(ね)に鳥肌が立ちました。また金子竜太郎さんの太鼓も一見してバチが跳ねるような打ち方ながら、実はしっかりと押さえが効いている見事さに目を奪われ、それぞれの技巧の巧みさに感動でした。

 さらに翌日は亀有で「和の音スタジオめでたい」のライブ。めでたい太鼓に三宅太鼓同好会や津軽三味線もゲストに加わり、若者たちが新しい試みに打って出ようとしている心意気がひしひしと伝わってきた舞台。これからどんな可能性を広げてくれるか、楽しみがまた一つ増えた思いがするイベントでした。

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2016年12月 5日

若手の活動が和太鼓文化の底上げに

 睦月、如月と始まった今年のカレンダーも、霜月を過ぎていよいよ最後の師走。毎年同じ感慨で恐縮ですが、今年も本当に早い一年でした。

 そうした中、この一年はことに若い打ち手の活動が目立ったように思います。これまで折々にご紹介してきましたが、ほかにも直近では11月、神戸の政本憲一さんが高槻市に太鼓教室「和太鼓政や」をオープン。また愛知県西尾市では山田純平さんが和楽総合芸術集団「熱響打楽」を立ち上げて、旗揚げ全国ツアーをスタート。それぞれにプロ意識をたぎらせ、新たなうねりを起こしていることは、まぎれもなく和太鼓文化の底上げとなり、まことに頼もしい限りです。

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 もちろんベテランの打ち手の皆さんも負けじとばかりに各地でコンサートやコラボレーションを繰り広げ、太鼓界を熱く燃やしてくれた一年でした。残すところあと3週間の間にも興味深いコンサートや太鼓祭があり、年末まで目が離せない状況です。

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2016年11月24日

薬師寺普山式で身の引き締まるような時間

 

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 20日日曜日、奈良の薬師寺にて村上太胤菅主の普山式が執り行われ、その厳かな席にお招きをいただきました。普山式とは、新たな菅主(一寺院を管掌する住職)の着任を披露する儀式で、式典にはおよそ3000人の参列者が列席されました。

 村上菅主は岐阜県各務原に生まれて9歳で薬師寺に入られ、長い間修行を積まれた功徳のあるお坊さん。にもかかわらず、まったく偉ぶったところのない気さくなご住職で、そんな人柄も多くの参列者に慕われるゆえんでしょうか。

 式典は薬師寺境内の三重の東塔・西塔と大講堂の間の広場で行われ、仏師で俳優の滝田栄氏の開式の辞に始まり、散華に続いて村上菅主が弥勒三尊像に向かって力強く決意の表白(ひょうびゃく)を読み上げました。さらにテノール歌手の秋川雅史氏の祝儀として朗々とした「翼をください」の独唱、また祝辞は春日大社宮司の花山院弘匡氏、総務大臣の高市早苗氏、奈良県知事の荒井正吾ほかというそうそうたる顔ぶれで、なんとも身の引き締まるような厳粛なひと時でした。

 式典終了後、第二部としてこれまた有り難いお話。まずは村上菅主と東大寺菅主、法隆寺菅主のお三方によるてい談。そろって龍谷大学のご出身ということで、和気あいあいと未来や希望について意見を交わし合う光景は、見ているこちらも幸せになるほど。続いて千住博氏による講話は「宇宙」と「わびさび」の関係について興味深く説かれ、心の奥にしみじみとしみ入っていくようでした。

 やまとのまほろばで、まさに一期一会の体験をしている今この時、日本に生まれたことの幸を思いながら豊かな心持ちで過ごさせていただいた3時間。周囲の皆さまのお導きにより、私のような徳の低い者がこのような晴れがましい場にお席をいただいたことの意味を思い、あらためて人の縁のありがたさを実感した出来事でした。

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