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2007年11月28日

若手職人、御所車に挑戦!


 今、工場の木工部では、若い職人が太鼓屋台にとりつける御所車の製作に挑戦しています。御所車は、まず木地を組み立てて(写真1.2)車輪をつくり、車輪の周囲に焼き入れした鉄輪を巻きつけて輪締めし(写真3.4.5.6.7)、漆でサビ付けを行い、最後に飾り金具を取りつけて完成します。木取りから完成までおよそ6カ月。太鼓をのせた重い屋台を支える重要な部分なので、将来的に緩みや歪みが出ないよう、車輪の構造や鉄輪の焼き入れには高度な技術と細心の精密性が求められます。

 浅野太鼓で初めて御所車を製作したのは今から35年ほど前のこと。神社・仏閣などからの曳山や太鼓屋台の製作依頼に対応するため、当時、一人で太鼓台の製作を担当していた宮本正敏さんが、多くの文献を調べ、地元の鉄工所にも協力をいただきながら、自分なりの工夫を重ねて浅野太鼓第一号の御所車を完成させました。
 現在、宮本さんは83歳になり、現役を退いてはいますが、木工の良き先輩として若い職人の相談相手になっています。宮本さんのお陰で浅野太鼓に新しい伝統が生まれ、また、宮本さんのチャレンジ精神を受け継いで若い職人が育っていくのは頼もしい限り。御所車の完成が楽しみな今日このごろです。

写真1(木地の組立)
 (写真 1)木地の組み立て

写真2(木地の組立)
 (写真 2)木地の組み立て

写真3
 (写真 3)鉄輪を焼きいれ

写真4
 (写真 4)鉄輪を焼きいれ

写真5
 (写真 5)鉄輪を焼きいれ

写真6
 (写真 6)すばやく水をかける

写真7
 (写真 7)鉄輪入れ完成

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2007年11月18日

三ツ打ちの名手、玉さんを悼む


 去る15日、福井県今立町で「越前権兵衛太鼓」を名乗って永く太鼓を打ってきた「玉さん」こと玉村武翁の訃報が届きました。福井に伝わる三ツ打ちの伝承に情熱をそそぎ、三ツ打ちを基本とした早打ち、合わせ打ちに絶妙な技の冴えを見せ、さらには六四、七三、五分五分、一束桴、十四日太鼓など独特の打法を編み出した玉さんは、どんな太鼓も自由に手なづける手品師のようでした。打ち込みと間のとり方に天性の素養を感じさせ、そのひょうきんな人柄も相まって、玉さんは多くの人に慕われました。

 私も玉さんとの間には、たくさんの思い出があります。北陸の太鼓屋が全国区になるには、まず全国の祭り太鼓の音を聞けと、日本中のお祭りを訪ねて一緒に旅しましたね。北海道、東北、四国、長崎、三宅島。どの風景を思い出しても、その中にいたずら好きでおどけた玉さんの笑顔があります。それから太鼓を打つ時の強弱や間のとり方をドンドコの図面に書いてわかりやすく指導する方法を教えてくれたこと、母親を大事にせいと説教されたこと、男の甲斐性とは何たるかを伝授してくれたこと、どの場面も昨日のことのように脳裏に浮かびます。
 ことに平成9年、「越前権兵衛太鼓」と加賀の「加賀太鼓」のメンバーにより「不老太鼓」と名づけた混成チームを結成し、国立劇場「日本の太鼓」に出演して三ツ打ちの神髄を披露してくれた姿は今も忘れることができません。

 病に伏して2年半。老いた姿を見せたくないと、一切の面会を拒み続けた玉さん。本当にご苦労様でした。そしてありがとうございました。
 享年79歳。どうぞゆっくりやすんでください。  合掌。

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2007年11月10日

自衛太鼓の練習を見学


 自衛隊では毎年、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の合同により、日本武道館で「自衛隊音楽祭り」を開催しています。このイベントでは隊員によるマーチングやドリル演奏、合唱などが一糸乱れぬ統制のもとに演じられますが、中でも大きなよびものとなっているのが、総勢200余名による「自衛太鼓」の演奏です。今年の開催は、11月16・17日の両日。それに先駆け、自衛隊横須賀基地武山駐屯地で行われている太鼓の合同練習を見学してきました。

 練習場となっているのは、駐屯地中央にある体育館。北は北海道、南は北熊本まで各本面部隊で練習を重ねてきた隊員207名がここで一堂に会し、2週間にわたって最後の仕上げを行うとのこと。全体の指揮をとる自衛太鼓総合訓練教官・山城リーダー(写真4)の号令のもと、リズムの統一、迅速なばちさばき、刻々と変化するフォーメーションの訓練などが繰り返された後、自衛太鼓名物の「一文字打法,写真1.2.3」の打ち込み稽古が始まりました。「一文字打法」とは文字通り太鼓を一文字に並べ、打ち手が順次、渡り打ちをして進んでいくという打法です。1列およそ50mの太鼓の列が3列。これを207名の打ち手がツバメ返しも鮮やかに整然と打ち進んでいく光景は、まさに壮観の一言。圧倒されるほどの躍動美と太鼓の大音響に包まれながら、40年前、北海道の登別温泉で、今は亡き大場一刀氏の太鼓を初めて拝聴した時のことを思い出しました。

 大場氏は北海太鼓の創始者で、当時、太鼓を静止して打つ、抱えて打つ、という打法が主流だった中、横に移動して打つという画期的な打法を編み出した人物です。氏は打法の革新だけでなく、ビクターから太鼓演奏のLP盤を発売したり、映画に出演するなど異色のキャラクターを発揮し、後にも先にもオンリーワン、日本の太鼓に大きな影響を与えました。その大場氏から北海太鼓の技を直伝されたのが、目の前にいる山城教官です。太鼓によって結ばれた人と人との絆を思い、胸が熱くなったひと時でした。

 自衛太鼓が「自衛隊音楽祭り」に参加するのは今年で37回目。彼らにしかできない、彼らにしか演じられない太鼓演奏。これまで多くの太鼓を見てきた私ですが、さらに練り上げられた自衛太鼓が披露される本番の日が待ち遠しい今日このごろです。

一文字打法   一文字打法  

1.一文字打法

 

2.一文字打法

 

一文字打法   山城リーダー  

3.一文字打法

4.山城リーダー

   

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2007年11月 9日

太鼓の製作、経切太鼓佳境に入る


 浅野太鼓の塗装部では、現在、経切(きょうぎり)太鼓の彩色工程が佳境に入っています。経切太鼓とは、真宗大谷派の読経の際に用いられる太鼓で、革面から胴に至るまで華やかな吉祥文様が描かれていることを特徴とします。

 製作中の太鼓は、革面・胴ともに全面に金箔を置き、革面には三つ巴と剣紋、胴には雲型を、黒、赤、青(緑)、黄、白の五彩で描いています。目を見張るほどに絢爛なこれらの図柄と色遣いには、実は、日本に仏教を伝えた中国で生まれた太極思想や陰陽五行思想に基づく壮大な願いが込められているのです。

経切

経切
絵師 中まゆみ

● 三つ巴......すべてのものは虚と無の二つの宇宙から構成され、陰と陽から成り立っているという太極思想の見方により、たとえば明暗、肯定と否定、男女など、極限の対立と調和をかたどる二つ巴を原点とする。日本に伝えられた二つ巴は、平安時代に奇数による日本的統制の和を示して三つ巴が完成。以後、三つ巴をアレンジしたさまざまな文様が発展した。

● 剣紋......剣は中国では自然力を超越した強大な力の象徴とされ、日本でも神が降臨する際のよりしろとして崇められた。古事記や日本書紀では草薙神剣(くさなぎのつるぎ)は三種の神器の一つに数えられ、今も端午の節句には欠かせない飾り物となっている。

● 雲......つねに千変万化し、何かの気配を示すもの。龍や鳳凰など瑞祥の周囲に描かれることが多く、また雨を降らせて五穀豊穣を導く象徴でもある。

● 黒、赤、青(緑)、黄、白......陰陽五行思想に基づく、日本におけるもっとも初発的な色彩。青は緑も含む。青は方位では東、季節では春を表し、赤は南と夏、白は西と秋、黒は北と冬を表す。


 これらはすべて中国の神話や儒教、仏教に由来するものですが、日本では同じく中国から伝わった仏教と独自の融合を果たし、仏具にも日本独特の華麗な様式美を描くに至ったのです。紋様、色彩の意味を理解すると楽しいです。日本人の文化誇れますね。 

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2007年11月 2日

浅野太鼓夢の木計画 第5回植林


 本日、11月2日、能登半島穴水町汁谷の山林にて、第5回植林を行ってきました。太鼓の原木となるケヤキの将来的な資源確保と地球環境の保護を願い、毎年3000本のケヤキの幼木を10年間にわたって植林する「夢の木計画」がスタートして5年。昨日の雨もどこへやら、小春日和の快適な秋空のもと、今年も社員総出で「あさの山」の尾根から谷まで、みずみずしい幼木を植えつけてきました。

 このケヤキが太鼓をつくれるまでに成長するには200年から300年の歳月を要しますが、5年前の第1回目の植林で植えた木は、すでに高さ2m以上に成長していました。幹の太さも、太いものでは直径5cm以上になり、悠然と下草を見下ろしています。自然の中で逞しく天に向かって枝を広げる木々を仰ぎながら、心から誇らしさを感じると同時に、「夢の木計画」という文字通りに未来への夢をいっそう大きくふくらませた一日でした。

  今年の植林エリア。


第5回植林エリア


  斜面もなんのその。5年目ともなれば、植樹の手つきも慣れたもの。


植樹の手つきも慣れたもの


  5年前に植えた木はこんなに太くなりました。


成長したケヤキ


  みんな元気にスクスク育っています。


元気に育っています


  木の成長ぶりを確かめる浅野専務。


成長を確かめる浅野専務


  植林を終え、全員で記念写真。


全員で記念撮影

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